第3回目のテーマは「試用期間と解雇の関係」です。

今回は、前回の「試行雇用(トライアル雇用)奨励金」の続きとして、先生方や一般中小企業の経営者の方々に誤解が多いと思われるテーマとして、「試用期間と解雇の関係」についてお話をしてみます。

今回のテーマ「試用期間と解雇の関係」

少人数で事業運営を行っております診療所(クリニック)では、人材の確保は重要な課題となっているかと思われます。しかし、『人』の採用は、実際に雇ってみないと判らない点が多々あるため、多くの事業所では採用の時に判断が難しかった業務適用能力をみる期間として「試用期間」を設定しております。
しかし、期間(日数)設定に関しては労働基準法と一般的に採用されております試用期間では多少意味合いが異なり、そこで解雇に関するトラブルが発生することがございます。

1.労働基準法上の試用期間の考え方とは?
 労働基準法で試用期間が大きな意味を持つものとして、解雇との関係があることは先生方もご存知であるかと思います。そこで「試用期間」と「解雇」の関係について法律上の解釈について説明をいたします。
 ①職員を解雇する場合は、「解雇予告」または「解雇予告手当」という手続きが必要となります。
  解雇予告 ・・・・・・解雇しようとする職員に少なくとも30日前に予告をしなければなりません。
  解雇予告手当 ・・ 解雇予告をしないで即時解雇をする場合は、30日分以上の平均賃金を解雇しようとする職員に支払うことが必要となります。
  ※解雇予告と解雇予告手当の併用の場合もございます
 ②上記①の手続きが不要となる場合(解雇予告等の手続きがいらない者)
  イ.日々雇入れられる者
    ※1ヶ月を超えて引き続き使用した場合は必要となります
  ロ.2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
  ハ.季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
    ※上記ロ、ハの者でも所定の期間を超えて引き続き使用した場合は必要となります
  ニ.試用期間中の者(14日以内)
    ※14日を超えて引き続き使用した場合は必要となります
    注)14日の日数カウントは労働日ではなく、休日も含めた暦日で行います
 以上でお分りかと思いますが、試用期間の14日以内であれば「解雇予告」または「解雇予告手当」という手続きが不要となります。

『社労士のアドバイス』
 試用期間の法的解釈は、解約権を留保した期間の定めのない労働契約となっておりますが、使用者側に契約の解除が認められております。ただし、通常の解雇より試用期間中の解雇の方が比較的広い範囲の理由で解雇が認められやすいというだけで、解雇理由に正当性がないとトラブルの原因となります。 

2.一般的な事業所で採用されている試用期間とは?
 試用期間自体は、法的な定めが無いため試用期間の長さについては、各事業所で任意で定めても問題はなく、また試用期間を設けなくても問題とはなりません。一般的に各事業所で採用されている試用期間は、業種により異なると思われますが2ヶ月から6ヶ月程度ではないでしょうか。

『社労士のアドバイス』
 試用期間の長さについては、上記の通り法的な定めはありませんが最長でも1年が限度ではないかと解釈されます。ただし、あまり長すぎる試用期間は、職員の不安と勤労意欲等を考慮しお勧めできません。どうしても長い期間が必要と考える場合は、本来の試用期間を2ヵ月から3ヵ月として、期間の延長を行うべきだと思います。また優秀な人材であれば、試用期間の短縮も必要だと考えます。
 
3.試用期間の解雇についての誤解
 前項1と2から誤解が多いのは、試用期間中または試用期間終了時の解雇に関して、労働基準法と一般的に事業所で採用されている試用期間の長さが異なる点から、下記のような内容が挙げられます。
  事業所で定めた試用期間(2ヵ月や3ヵ月)であれば、解雇予告や解雇予告手当がいらない。
  (即時解雇が可能であると思ってしまう)
  事業所で定めた試用期間(2ヵ月や3ヵ月)であれば、一方的に解雇ができる。
  (解雇理由に正当性を欠いてしまう)

『社労士のアドバイス』
 試用期間の解雇に関する留意点について
 ①労働基準法上の解釈である試用期間14日を超えてしまうと、事業所独自で定めている試用期間であっても「解雇予告」および「解雇予告手当」という手続きが必要となります。

 ②試用期間の解雇理由については、通常の解雇より比較的広い範囲で解雇理由が認められるとしても、解雇の前提である「労働者を解雇するには,解雇に値する客観的に合理的な理由が必要である」という労働基準法の適用は残るため、解雇できる理由を採用時に明確にしておく必要があると考えます。

 【正当な事由として解雇が比較的認められ易い例】
  ※試用期間の解雇事由としては、採用時の面接等で判断ができなかった事実が、試用期間中に明確になったものである必要がございます
  ○出勤率の不良(出勤率が90%未満の場合や無断欠勤が3回以上の場合)
  ○勤務態度の不良(上司の注意や指導を受けても改善されなかった場合)
  ○経歴の詐称
  試用期間は、事業所側でも教育や指導を行う期間であることから、不採用事由があったとしても改善を促す必要があり、即時解雇が認められない場合がある点に十分ご留意下さい。
  ※即時解雇は避け、事業所として改善指導を十分行っても不適格と判断される時に解雇を検討することが必要です

4.試用期間の解雇に関するトラブル防止について
 試用期間の解雇に関するトラブルを未然に防止するには、以下のような方法で事前に対策を取ることをお勧めいたします。
 ①職員を採用する時に労働契約書を作成し、試用期間や試用期間の解雇理由を明確にしておく。
  ※労働契約に関しては、昨年(平成19年)12月に公布された「労働契約法」により、今後重要なものとなってまいります。
 ②就業規則で試用期間や試用期間の解雇理由を明確にしておく。
 ③試用期間の延長を労働契約書や就業規則に記載する。
 ④試用期間を有期の雇用契約とする。
  ※各事業所で定めた試用期間(2ヶ月や3ヶ月)で雇用契約を行う
 ⑤労働契約書や就業規則の作成を実施していない場合や、解雇事由が不明確(客観的に判断できない)な場合は、解雇ではなく退職勧奨が出来るように話し合いの時間を多くし円満な解決を図る。
  ※退職勧奨とは、使用者(事業所)が労働者(職員)に退職を勧め、労働者(職員)がこれに合意し、任意退職扱いとするものです

『社労士のアドバイス』
 近年は、インターネットの普及により労働者(職員)も情報の入手が簡単にできる現状をふまえて、「試用期間の解雇」だけではなく、その他の労働条件等についても就業規則や労働契約書で明示できるように整備しておくことがトラブル防止の最善な対策となってまいります。また、前回も記載いたしましたが、社会保険等の加入に関しては、試用期間であっても雇用した日より加入することが必要です。


試用期間とは、雇用のミスマッチを防止し使用者(事業所)と労働者(職員)が業務適正を判断する期間でもありますが、できるだけ試用期間終了後も正規雇用が可能となるように使用者(事業所)が労働者(職員)に対して、指導や教育を十分に実施し、解雇は最終手段として考えるべきものだと思います。
 

  お問合せ・ご相談は下記宛にメール、電話、FAXでお願い致します。
  注)お問合せ・ご相談される場合に既に他の社会保険労務士の先生と顧問契
     約がある方はご遠慮願います。

  保坂社労士事務所
   TEL 029-254-8810
   FAX 029-254-8810
   E-mail srhosakaoffice@ybb.ne.jp

第2回目のテーマは「試行雇用(トライアル雇用)奨励金」です。

今回は先生方があまり活用をしていない助成金関係で診療所(クリニック)でも受給が出来そうで、使いやすい「試行雇用(トライアル雇用)奨励金」をテーマにしてお話をしたいと思います。
そもそも助成金とは、国が施策を実現するために支給している返済不要のお金ですが、制度自体がよく知られていない点や手続きが面倒であったりと意外と活用されていないのが現状です。しかしながら活用を検討することは、先生方にとってメリットはあってもデメリットは少ないと思われます。

注)法人税又は所得税の課税所得を計算する場合、益金として課税対象となる点にご留意下さい。

今回のテーマ「試行雇用(トライアル雇用)奨励金」

多くの事業所では『人』の問題で悩み、経費(人件費)と時間がムダになっている場合があるかと思います。
でも、そのリスクを軽減する方法があるとしたら・・・・・・・。

職員を採用した時に以下のような経験をされたことがありませんか。

  • 職員を採用してもすぐに辞めてしまう
  • 採用してみたら思っていたような人材ではなかった
  • なかなか仕事に慣れないで指導に時間を取られる
  • 他のスタッフとうまくやれない

『人』の採用は、実際に雇ってみないと判らない点が多々あり、上記のような問題が起こる可能性が十分考えられます。そこで国が雇用対策の1つとして、3ヶ月以内の試用雇用(トライアル雇用)を実施した事業主へ奨励金を支給する制度を実施しております。

1.試行雇用(トライアル雇用)奨励金とは?
  業務遂行に当たっての適性や能力などを見極め、その後の常用雇用への移行や雇用のきっかけとするため、経験不足等により就職が困難な求職者を試行的に短期間雇用(原則3か月以内)する場合に支給される奨励金です。

『社労士のアドバイス』
 この奨励金は、3ヶ月以内の定めがある雇用契約(有期雇用契約)を結び雇用することが必要となります。言い替えれば雇用契約期間を満了すれば、必ず本採用とすることを義務づけるものでもありません。しかし、できるだけ本採用となるように努めるべきかと思います。また、社会保険等の加入に関し
ては、試用期間であっても雇用した日より加入することが必要です。
  ※雇用契約期間は、3ヶ月以内であれば1ヶ月や2ヶ月でも可能です
 ※雇用契約に対しては、事業主と従業員との間でこの制度の主旨を理解し行うべきだと考えます

2.主な支給要件
  試行雇用(トライアル雇用)奨励金の支給を受けるには以下の3つの条件が必要となります。
 条件1 ・・・ ハローワークを通じてトライアル雇用の求人をしている
                 
※ハローワークの紹介でない採用は対象となりません

 条件2 ・・・ 採用した職員が以下のいずれかに該当している
                  ※診療所(クリニック)では比較的若い職員を採用するケースが多く②又は③の適用が可能だと思われます。
         ①45歳以上65歳未満の中高年齢者
                   (原則として雇用保険受給資格者に限る)
         ②35歳未満の若年者
         
③母子家庭の母等
         ④障害者
         ⑤季節労働者
          (指定地域の指定業種に限る)
         ⑥日雇労働者・ホームレス
          
 条件3 ・・・ 雇用保険の適用事業所である(雇用保険に加入している)

『社労士のアドバイス』
 上記の条件以外に以下のような注意点がございます。
  ①支給用件期間(過去6ヶ月間)に労働者(雇用保険の被保険者)を事業主都合(解雇および退職勧奨)で離職させていない。
   ※試行雇用(トライアル雇用)期間中も同様
 ②過去3年以内に雇用した者を試行雇用(トライアル雇用)することはできません。
 ③労働保険料の未納が無い(奨励金支給の前々年度より前の年度まで)

3.支給される金額
  試行雇用(トライアル雇用)で雇用した一人に対して1ヶ月4万円最大12
  万円
が支給されます。
  ※支給対象期間が1ヶ月に満たない場合は、別の計算式より算定されます
  例 8月にAさんとBさんを試行雇用(トライアル雇用)で採用し、Aさん
     を2ヶ月、Bさんを3ヶ月雇用した場合
    Aさんの奨励金の支給額
     4万円 × 2ヶ月 = 8万円
    Bさんの奨励金の支給額
     4万円 × 3ヶ月 = 12万円
    事業所には合計で20万円の奨励金が支給されます。

『社労士のアドバイス』
 試行雇用(トライアル雇用)の対象労働者が途中で自己都合退職しても支
  給されます。

4.受給のための手続き
 ①ハローワークに求人登録をする時に、トライアル雇用専門か併用の求人票とトライアル雇用求人関係資料を提出
 ②トライアル雇用の対象者を雇入れた日から2週間以内にトライアル雇用実施計画書をハローワークへ提出
 ③トライアル雇用終了後の1ヶ月以内にトライアル雇用結果報告書及び試行雇用奨励金申請書をハローワークへ提出

5.試行雇用(トライアル雇用)に関連する奨励金
  25歳以上35歳未満の者を試行雇用(トライアル雇用)で雇用し、その後正
  社員として1年以上継続雇用した場合に「若年者雇用促進特別奨励金」が
  支給されます。以下簡単に支給要件を記載いたします。


①試行雇用(トライアル雇用)により雇入れた者が対象
②対象労働者が試行雇用(トライアル雇用)開始前の3年間、雇用保険の被保険者でなかった場合(失業中である)
③試行雇用(トライアル雇用)終了後、正社員(雇用期間の定めがない雇用で1週間の所定労働時間が通常の労働者と同程度)として1年以上継続雇用した場合
  ※若年者雇用促進特別奨励金として支給される金額 
 (6ヵ月後と1年後の2回に分割して支給されます)
   30歳未満 ・・・ 総額20万円
   30歳以上35歳未満 ・・・ 総額30万円

『社労士のアドバイス』
 対象労働者が3年間雇用保険の被保険者期間が無いことの確認は、個人情報の関係で本人の同意を得てハローワークに確認することが必要かと思います。

 保坂社労士事務所
   TEL 029-254-8810
   FAX 029-254-8810
   E-mail 
srhosakaoffice@ybb.ne.jp

第1回目のテーマは「賞与の支給について」です。

現在、診療所(クリニック)経営の環境は、2年に1度の診療報酬改定のつど収入
の変動を招いている現状だと思われます。そして来年の平成20年4月には、また
診療報酬改定の年がやってまいります。
今回は診療報酬がマイナス改訂されても減額するのが難しい人件費の中で、時
期的なテーマである、「賞与」についてお話をしたいと思います。

 今回のテーマ「賞与の支給について」

もうすぐ12月となり、診療所(クリニック)でも冬の賞与支給シーズンが到来し、先生方は、今年の賞与支給は何ヶ月分にしようかと考えている時期かと推測されます。


【支給基準の設定で多い考え方】
 ①勤務医時代の病院の支給基準を使用する
  病院と診療所では給与体系に違いがあり、高額になる可能性があります。
  ②公務員の人事院勧告の支給係数を使用する
  公務員の基準は、一定規模以上の企業を参考としているため診療所で使用すには多少無理があります。
  ③すでに開業している先輩や知人の支給基準を使用する
    事業所ごとに経営実態が異なるため、支給金額が高額であったり、少額であったりとばらつきがでることがあります。
    ※開業している地域により給与格差がございます

支給基準の設定については、過年度の実績や経営計画の数値より賞与の支給額を決定する時点での経営実態(経常利益、資金収支、人件費比率、労働分配率など)を把握し、賞与の支給可能月数を決めその範囲内で支給するのが理想であると思います。
また、あまり複雑な基準を設定すると運用が難しくなります。
※各事業所で経営実態が異なるため、自医院に合った支給基準を設定することが適正な賞与支給額となるのではないでしょか

【賞与支給額の考え方】
  基礎となる給与 × 係数(支給月数)= 賞与支給額

  ※基礎となる給与には「基本給」のみや「基本給+固定的手当」などの場合がございます
 
【賞与から控除されるもの】
 雇用保険を除き毎月の給与計算と異なる方法で控除することに注意が必要です。
 ①健康保険料
  ※医師国保の加入事業所は控除不要
  a.40歳未満の支給対象者の場合は健康保険料のみ
   賞与支給額※1 × 健康保険料率※2 = 控除健康保険料
  b.40歳以上65未満の支給対象者は健康保険料と介護保険料が控除されます。
   賞与支給金額※1 ×(健康保険料率※2+介護保険料率※3
                                = 控除健康保険料

   ※1・・・1,000円未満の端数切捨て(厚生年金保険料も同様)
   ※2・・・0.041(平成19年11月現在)
   ※3・・・0.00615(平成19年11月現在)
   注)計算した控除健康保険料に円未満の端数が生じた場合は、50銭以下切捨て51銭以上切り上げとなります。
     (厚生年金保険料も同様)

 ②厚生年金保険料
   賞与支給額※1 × 厚生年金保険料率※2 = 控除厚生年金保険料
   ※1・・・1,000円未満の端数切捨て
   ※2・・・0.07498(平成19年11月現在)
   注)計算した控除厚生年金保険料に円未満の端数が生じた場合は、50銭以下切捨て51銭以上切り上げとなります。

 ③雇用保険料
   賞与支給額※1 × 雇用保険料率※2 = 控除雇用保険料
   ※1・・・健康保険や厚生年金と異なり賞与支給額の端数処理なし
   ※2・・・診療所の場合は0.006(平成19年11月現在)
   注)計算した控除雇用保険料に円未満の端数が生じた場合は、50銭以下切捨て51銭以上切り上げとなります。

 ④源泉所得税
   賞与支給額 − 社会保険料等控除額※1 = 課税対象額
   課税対象額 × 賞与に対する税率※2 = 源泉所得税徴収額

   ※1・・・賞与より控除した健康保険、厚生年金保険、雇用保険の合計額
   ※2・・・賞与に乗ずる税率は、賞与支給日の前月分に支給した給与(社会保険料等控除後の給与額)を基準に扶養の数で決定します

 『社労士のアドバイス』
  健康保険及び厚生年金保険の適用事業所となっている場合は、賞与を支給した
  日より5日以内に「賞与支払届と賞与支払届総括表」の提出が必要となります。

    賞与支払届のお手伝いをさせて頂きます!

 当事務所でも事務手続き代行をいたしますので、必要な方はご連絡願います
     【当事務所の賞与支払届手続き業務の報酬基準】
   手続き代行業務とは、必要資料等をお預かりし書類を作成して社会保険事務
   所に提出すまでの業務となっております。
   ※下記報酬基準は、顧問契約先でない場合の報酬を表示しております
        顧問契約がある場合は、契約内容に応じて報酬金額を減額又は無料といた
    します     
   ※報酬額は消費税込みとなっております
    

 人 数

 5人未満

5人〜10人 

 11人〜20人

 報酬額

 10,500円

 21,000円

 31,500円

 1.労働基準法の賞与に関する取扱

賞与制度を設定することについて義務付けられているものではありません。しかし、慣習として支給がされている場合は、労働基準法に明確な規定が無いことを理由に不支給とすることは、労働条件の不利益変更となり行ってはいけないものです。
また、労働基準法上の就業規則の規定では、相対的必要記載事項(制度として設ける場合には記載する必要があり、必ずしも記載が必要ではない)とされております。しかし、日本で賞与とは、慣習的に多くの企業が実施しており、労働者側は給与の一部として考えている点から、人材を定着させる意味から出来る限り支給することが望ましいと思います。
支給に関しては、経営を圧迫させないよう資金原資を検討し、支給額の上限を設定し制度として定着させるべきです。
※制度として定着させるには、従業員から説明を求められても対応が出来るよう労働契約の整備や就業規則等の作成が必要と考えます

2.診療所(クリニック)の賞与は年間何ヶ月程度なのか?

賞与の支給基準に関しては、各クリニックで「バラバラ」なのが現実であり、例外的に4.5ヶ月(年間)や5ヶ月(年間)というところもあるでしょうが、おそらく2.5ヶ月(年間)〜4ヶ月(年間)の間で支給しているクリニックが多いと思われます。
※支給月数が同じだとしても、各事業所で基本給の設定額が異なるため支給金額に差が生じます

 『社労士のアドバイス』
  賞与の支給基準(支給月数)は、最初に設定した基準を変動させない方が良いと
  思います。業績が良ければ上乗せし、業績が悪ければ上乗せしない、というよう
  な方法を検討する必要があると考えます。この場合、支給基準(支給月数)を多
  少低めに設定しおくことが必要となります。

  例:年間3.5ヶ月を支給上限と考える場合
    支給基準(支給月数)を3ヶ月として変動幅を0.5ヶ月分確保し、最低額は支
    給できるようしておくことが良いでしょう。

    基準賞与 + 加算 = 総支給額

    ※基準賞与には生活補償的な意味を持たせます
    ※加算については業績や従業員の勤務実態で変動可能とします
    注)勤務実態に関して有給休暇取得を査定の基準とすることは、不利益的取
      扱となる点からできません。

 3.支給月数の振分けについて
  年間支給月数の振分けは、夏と冬では冬の方が多いのが一般的な支給方法だと思
  われます。 

   例:年間3.5ヶ月の賞与を支給する場合
     夏を1.5ヶ月とし冬を2ヶ月とする。

   例:年間3ヶ月の賞与を支給する場合は下記の2つが一般的だと思われます。
     夏と冬の双方を1.5ヶ月とする。
     夏を1ヶ月とし冬を2ヶ月とするように、冬の支給額を増額させる。
  
 『社労士のアドバイス』
  診療科によっては、季節的変動が大きい科もございますので、夏と冬の支給月数を
  逆にすることも必要かと思います。また、事業所の決算確定前の賞与は例年最低額
 (前項2の基準賞与のみ)の支給とし、決算確定後に精算して支給するのも1つの考え
  方ではないでしょうか。

   例:個人事業所で12月決算の場合
      賞与支給限度額を3.5ヶ月とし基準賞与3ヶ月と加算額0.5ヶ月としている場合

      12月に支給する賞与は基準賞与の1.5ヶ月
      6月に支給する賞与は基準賞与の1.5ヶ月+加算額

      ※前期分を精算して加算額を調整する
      注)事業所の決算月と賞与支給月が同月の場合、決算対策で多く支給する必
        要がある時は、6月の加算額に検討が必要となります。

 4.賞与の支給対象期間について
  賞与には支給するための条件として、支給対象期間が一般的に設定されております。
  そして支給対象期間を満たし、支給日現在で事業所に在籍している従業員に対し支
  給されることとなります。
  ※支給日現在ではなく、支給月の1日現在在籍という規程もあります


  (支給対象期間の例)
   6月と12月に賞与を支給する事業所の場合
   6月支給の対象期間 ・・・ 前年の7月から前年の12月まで在籍
                    していた従業員を対象とする
   12月支給の対象期間 ・・・ 当年の1月から当年6月まで在籍し
                     ていた従業員を対象とする

  ※支給日現在で在職している中途入職者でも、対象期間に在籍していないと支給され
   ません
  ※支給対象期間を半年遅らせていることとで、新規採用職員(中途も含む)への賞与
   支給を初回のみ遅らせることが出来ます
   但し、新規採用職員(中途も含む)は初回のみ別規程を設けて支給することが得策
   であると考えます。


賞与も人件費の一部であるため、経営的には収入(診療報酬等)の何割までで人件費(給
与総額)を抑えるかを検討し、賞与の支給限度額を設定しその範囲内で基準(支給月数)
を決定することが良いと思います。
賞与とは、会社の業績や労働者個人の勤務成績に応じて支給する点を考慮すると変動す
る可能性があります。また、毎月の給与を減額させることは困難ですが、賞与は可能であ
るため、人件費(給与総額)を調整する手段であるとも考えられます。
注)現在の支給状況から大幅に支給基準を低下させた場合、不利益変更となることがあり
  ますのでご注意下さい。

 

   ***** 独り言 *****

平成18年4月の診療報酬改定は、診療所に大きな影響があり、特に整形外科の先生方は
大幅減収になっていると思われます。私の個人的意見では、診療報酬改定の他に処方日
数の上限がなくなり、大きな病院が2ヶ月以上の処方日数を実施していることで、診療所
でも患者さんからの要求で3週間や1ヶ月と処方日数が延び1ヶ月の再来率が低下し、点数
改正以外に影響があるのではと考えております。
保険医療機関である以上国の方針で診療収入が変動するのは避けられませんが、1ヶ月
のレセプト件数の変動が無ければ患者数が確保されていると思われ、安定した経営を行え
るのではないでしょうか。


   ***** 当事務所の顧問報酬について *****

社会保険労務士の顧問報酬の考え方は、雇用している労働者の人数で金額を決定する方
法を取っており、当事務所も同様の基準となっております。
是非この機会に社会保険労務士との顧問契約をご検討下さい。

【当事務所の報酬基準】診療所(クリニック)用の一部抜粋
 注)顧問報酬には、給与計算、助成金申請、就業規則作成等は含まれておりません。
 注)以下記載している全ての報酬基準は消費税込みの金額となっております。
 注)人数とは、社会保険及び雇用保険の加入者の多い方の人数となっております。

   (詳細は当事務所ホームページの顧問契約形態と業務案内をご覧下さい)
 ①業務委託顧問契約(医師国保加入のクリニック)
  ※医師国保と労働保険・雇用保険に加入しており、雇用保険関係の事務手続き代行業
   務をする場合(医師国保の手続き代行はございません)
  ※毎年5月に行う労働保険料の申告を含む 

 人   数

 5人未満  

5人〜10人 

 報酬月額

 13,650円

 17,850円

 ②相談顧問契約(医師国保加入のクリニック)
  ※医師国保と労働保険・雇用保険に加入しており、雇用保険関係の事務手続き代行業
   務をしない場合(手続関係は全て自医院で行い相談関係のみ)
  ※毎年5月に行う労働保険料の申告を含む

 人   数

10人 以下

 報酬月額

12,600円

 ③業務委託顧問契約(医師国保又は健康保険と厚生年金加入のクリニック)
  ※医師国保又は健康保険と厚生年金及び労働保険・雇用保険に加入しており、社会保
   険関係全ての事務手続き代行業務をする場合(医師国保の手続き代行はございま
   せん)
  ※毎年5月に行う労働保険料の申告を含む
  ※毎年7月に行う算定基礎届業務を含む

 人  数

 5人未満

 5人〜10人

 11人〜20人

 報酬月額

 15,750円

 19,950円

 28,350円

 ④相談顧問契約(医師国保又は健康保険と厚生年金加入のクリニック)
  ※医師国保又は健康保険と厚生年金及び労働保険・雇用保険に加入しており、社会保
   険関係の事務手続き代行業務をしない場合
   (手続関係は全て自医院で行い相談関係のみ)
  ※毎年5月に行う労働保険料の申告を含む
  ※毎年7月に行う社会保険の算定基礎届業務を含む

 人  数

 10人 以下

 11人〜20人

 報酬月額

 14,700円

 20,790円

 お問合せ・ご相談は下記宛にメール、電話、FAXでお願い致します。
 注)お問合せ・ご相談される場合に既に他の社会保険労務士の先生と顧問契約がある方
  はご遠慮願います。

 保坂社労士事務所
   TEL 029-254-8810
   FAX 029-254-8810

   メールのお問い合わせ

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
029-291-6956

営業時間:AM9:00~PM5:30
定休日:土曜日、日曜日、祝祭日、夏季休暇、年末年始

現在、茨城県水戸市に事務所を置く社会保険労務士(社労士)です。
当事務所は、一人医師医療法人、個人開業医(クリニック)の先生方及び介護福祉事業の経営者の皆様の良き相談役を目指し努力してまいります。当事務所の活動地域は水戸市、ひたちなか市、笠間市、那珂市、東茨城郡を中心に考えております。

就業規則診断(無料)

お電話でのお問合せ

029-291-6956

<営業時間>
AM9:00~PM5:30
※土曜日、日曜日、祝祭日、
夏季休暇、年末年始は除く

保坂社労士事務所

住所

〒311-4142
茨城県水戸市東赤塚2081-1
キューコートアカツカ502

営業時間

AM9:00~PM5:30

定休日

土曜日、日曜日、祝祭日、
夏季休暇、年末年始